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カスタマーレビュー
おすすめ度:
ローマ人の物語12ー迷走の行く末
(2006-06-11)
十数年前に始まったローマ人の物語が遂に大団円を迎えようとしています。その予感を感じさせる内容となっています。塩野七生さんもかなり迷走しながら今まで走ってきたと思います。しかし遂にその行く末が見えた、あるいはその結末を書く覚悟が出来たのではないでしょうか。
ローマ時代というと大掛かりで大層な歴史と敬遠する方が多いと思いますが、これはそのまま日本のこれからのあり方を示していると思います。ここまで走ってこられた塩野さんの脚力(腕力?)に賞賛を送ります。
実力主義について
(2006-05-19)
既に多くのレビュアーの方が本書について論評されているので、私がさらに付け加えることはもうほとんどないのだが、あえて書かせてもらうと、本書においても優れたリーダー論が展開されていることに注目してほしい。リーダーに求められる資質とは何ぞや、が本シリーズを通してのテーマの一つと考えるのであるが、本書で最も私の注目を引いたのは「実力主義とは、昨日まで自分と同格であった者が、今日からは自分に命令する立場に立つ、ということでもある。」の一文である。実力主義の定義としてこれほど私に納得のゆくものはない。実力主義を標榜するわが社・部門で起こっていることはまさにその通りです。そうはわかっていても、現実を理性だけで受けとめるのは難しいもの。作者は皇帝アウレリアヌス、プロブスの悲劇の原因を部下との距離が近づきすぎたからだと喝破します。かといって、距離をとりすぎると、親近感を欠きすぎることになり、本書からは離れますが、皇帝ティベリウスのような不人気を招く。とかく、組織・リーダーの健全なあり方は難しいものです。組織のあり方としては、カラカラ帝のアントニヌス勅令が、悪平等を生み出し、それまでの階層はあるけれども実力で上昇可能なピラミッド型の組織から、階層が固定された社会に変貌し、ひいてはローマ人らしさをなくす原因になったとする指摘は、私がこれまで考えもしなかったものだけに、その指摘の鋭さに感服します。
本書は軍人皇帝の時代を中心に、混乱に満ちた、古代ローマ史ファンにとっては苦痛の時代、おそらく誰にとっても登場人物が多すぎて読むのが大変な時代を扱っていますが、作者は上記のように、リーダー・組織のあり方についての意識をベースにこの時代を簡潔にまとめており(簡潔すぎる感じもちょっとしますが)、その努力に対して星5つを献呈したいと思います。
カラカラ帝
(2006-01-08)
今回はカラカラ帝が一番印象的でした。
カラカラ帝によるアントニヌス勅令。
これによるローマ市民権の取得権から既得権への方向転換。
どうやら、著者はこの権がローマが衰退に向かった最大の
原因であると考えている様子が伺えます。
一見、問題がないように見える権利の平等、既得権化が
ローマを弱くして行く。
ローマを支えていたのは富裕層による道路などのインフラの提供、
一般市民による軍団への参加、血の税金による公共心ということを
えてみればこれ以降はローマ市民権は名誉の印とはなりませんから、
公共心を喚起する力はなくなります。
人間は自分自身は公共体にとって相対的に特別な存在であるという
認識が公共心をもつことになるのは当然ですから、
人間の心理からみても納得できる論です。
そのことは逆に公共体から別に特別な扱いをされていないことを
考えてみればわかります。そのような人たちがその共同体を
強く大切にしたいとは考えないでしょう。
現代では民主主義というものは私は疑いなく良いものだ
という認識がありましたが、ニートとかフリータとか、
どうみても公共心が薄い人たちが現在に発生していることを考えると、
この本は平等な既得権というものは本当に無邪気に良いものだと考えて
いいものか?という疑問を私の心に浮かばせたとても印象的な
一冊となりました.
皇帝もツライよ・・・
(2005-11-22)
3世紀70数年間のローマ帝国を描く。この間に擁立された皇帝は22人(!)。その大部分が謀殺という形で任期を終わった、という。残りも戦死、疫病死、虜囚の末の獄死と、一人を除いてまともな死に方をした皇帝がいない(“まともな死にかたをした”という一人は75歳という超高齢で就任し、遠征途中に老衰で死んでいる)。皇帝が終身制であったため皇帝に対する不信任は謀殺という形をとって行われたというのだ。中国の皇帝たちや後代の欧州の王政と比較した場合のローマ帝国の特異な点といえよう。しかもこの皇帝たち、就任したからといって首都ローマで贅沢におぼれる余裕もなく、各地の蛮族の侵入や、隣国との争いに明け暮れ、まさに東西奔走している。その挙句に失敗は死をもって購われたというのだ。皇帝もツライよ・・・。また必ずしも世襲でなかった点も特徴としてあげられるだろう。
著者はこの皇帝が次々と代わることによる政策の非継続性が、その後の国力減退の要因のひとつだと、論じる。またローマがローマであった特色を失わせるような施策、たとえばローマ市民と非市民の区別をなくす(カラカラ帝)、元老院と軍事の分離もあげている。
いよいよ帝国が変容・斜陽化していく姿(とはいえこの後、帝国は百年超保っているが)を読み取っていきたい。
ローマがローマ的であるが為に衰退していくという説の新鮮さ
(2005-02-06)
前巻から始まったローマ帝国衰亡史の続き。
栄枯盛衰が世の習いとはいえ、栄華を極めたローマもまた衰亡していくわけで。
それはローマがローマ的であるが為に衰退していったという説は、なかなか興味深く。
加えて、キリスト教がこの時代に台頭した理由も明解に示唆。
つまりそれはパクス・ロマーナが衰えた結果……なるほど。
おすすめ度:
ローマ人の物語12ー迷走の行く末
十数年前に始まったローマ人の物語が遂に大団円を迎えようとしています。その予感を感じさせる内容となっています。塩野七生さんもかなり迷走しながら今まで走ってきたと思います。しかし遂にその行く末が見えた、あるいはその結末を書く覚悟が出来たのではないでしょうか。
ローマ時代というと大掛かりで大層な歴史と敬遠する方が多いと思いますが、これはそのまま日本のこれからのあり方を示していると思います。ここまで走ってこられた塩野さんの脚力(腕力?)に賞賛を送ります。
実力主義について
既に多くのレビュアーの方が本書について論評されているので、私がさらに付け加えることはもうほとんどないのだが、あえて書かせてもらうと、本書においても優れたリーダー論が展開されていることに注目してほしい。リーダーに求められる資質とは何ぞや、が本シリーズを通してのテーマの一つと考えるのであるが、本書で最も私の注目を引いたのは「実力主義とは、昨日まで自分と同格であった者が、今日からは自分に命令する立場に立つ、ということでもある。」の一文である。実力主義の定義としてこれほど私に納得のゆくものはない。実力主義を標榜するわが社・部門で起こっていることはまさにその通りです。そうはわかっていても、現実を理性だけで受けとめるのは難しいもの。作者は皇帝アウレリアヌス、プロブスの悲劇の原因を部下との距離が近づきすぎたからだと喝破します。かといって、距離をとりすぎると、親近感を欠きすぎることになり、本書からは離れますが、皇帝ティベリウスのような不人気を招く。とかく、組織・リーダーの健全なあり方は難しいものです。組織のあり方としては、カラカラ帝のアントニヌス勅令が、悪平等を生み出し、それまでの階層はあるけれども実力で上昇可能なピラミッド型の組織から、階層が固定された社会に変貌し、ひいてはローマ人らしさをなくす原因になったとする指摘は、私がこれまで考えもしなかったものだけに、その指摘の鋭さに感服します。
本書は軍人皇帝の時代を中心に、混乱に満ちた、古代ローマ史ファンにとっては苦痛の時代、おそらく誰にとっても登場人物が多すぎて読むのが大変な時代を扱っていますが、作者は上記のように、リーダー・組織のあり方についての意識をベースにこの時代を簡潔にまとめており(簡潔すぎる感じもちょっとしますが)、その努力に対して星5つを献呈したいと思います。
カラカラ帝
今回はカラカラ帝が一番印象的でした。
カラカラ帝によるアントニヌス勅令。
これによるローマ市民権の取得権から既得権への方向転換。
どうやら、著者はこの権がローマが衰退に向かった最大の
原因であると考えている様子が伺えます。
一見、問題がないように見える権利の平等、既得権化が
ローマを弱くして行く。
ローマを支えていたのは富裕層による道路などのインフラの提供、
一般市民による軍団への参加、血の税金による公共心ということを
えてみればこれ以降はローマ市民権は名誉の印とはなりませんから、
公共心を喚起する力はなくなります。
人間は自分自身は公共体にとって相対的に特別な存在であるという
認識が公共心をもつことになるのは当然ですから、
人間の心理からみても納得できる論です。
そのことは逆に公共体から別に特別な扱いをされていないことを
考えてみればわかります。そのような人たちがその共同体を
強く大切にしたいとは考えないでしょう。
現代では民主主義というものは私は疑いなく良いものだ
という認識がありましたが、ニートとかフリータとか、
どうみても公共心が薄い人たちが現在に発生していることを考えると、
この本は平等な既得権というものは本当に無邪気に良いものだと考えて
いいものか?という疑問を私の心に浮かばせたとても印象的な
一冊となりました.
皇帝もツライよ・・・
3世紀70数年間のローマ帝国を描く。この間に擁立された皇帝は22人(!)。その大部分が謀殺という形で任期を終わった、という。残りも戦死、疫病死、虜囚の末の獄死と、一人を除いてまともな死に方をした皇帝がいない(“まともな死にかたをした”という一人は75歳という超高齢で就任し、遠征途中に老衰で死んでいる)。皇帝が終身制であったため皇帝に対する不信任は謀殺という形をとって行われたというのだ。中国の皇帝たちや後代の欧州の王政と比較した場合のローマ帝国の特異な点といえよう。しかもこの皇帝たち、就任したからといって首都ローマで贅沢におぼれる余裕もなく、各地の蛮族の侵入や、隣国との争いに明け暮れ、まさに東西奔走している。その挙句に失敗は死をもって購われたというのだ。皇帝もツライよ・・・。また必ずしも世襲でなかった点も特徴としてあげられるだろう。
著者はこの皇帝が次々と代わることによる政策の非継続性が、その後の国力減退の要因のひとつだと、論じる。またローマがローマであった特色を失わせるような施策、たとえばローマ市民と非市民の区別をなくす(カラカラ帝)、元老院と軍事の分離もあげている。
いよいよ帝国が変容・斜陽化していく姿(とはいえこの後、帝国は百年超保っているが)を読み取っていきたい。
ローマがローマ的であるが為に衰退していくという説の新鮮さ
前巻から始まったローマ帝国衰亡史の続き。
栄枯盛衰が世の習いとはいえ、栄華を極めたローマもまた衰亡していくわけで。
それはローマがローマ的であるが為に衰退していったという説は、なかなか興味深く。
加えて、キリスト教がこの時代に台頭した理由も明解に示唆。
つまりそれはパクス・ロマーナが衰えた結果……なるほど。
あと『軍人皇帝時代』という響きで否定的に見ていたこの時代の事が、次の一文で目から鱗。
「軍人皇帝の輩出も、三世紀という時代の要請に応えた現象の一つではないかと思っている。
軍人皇帝であったというだけで非難するのは、シビリアン・コントロールという現代の概念で
過去まで律しようとする、アレルギーの一種ではないかとさえ思う」
確かに、現代の尺度で当時の事を断罪するのは、あまり良い事とは思えないです、はい。
