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カスタマーレビュー
おすすめ度:
原始仏教の生命観世界観とは真逆
(2009-01-08)
それが良いことか悪いことかはさておき、ブッダとなったゴータマの人生を前世から綴った伝承をもとにしていうのですが、
いつも通り手塚的生命観と世界観によって大きく翻意されています。
ブラウマーとゴータマの位置関係も逆になっていて、創作として読むならまだしも、
これ自体だけでブッダの生命観、世界観を学んだつもりになるのは危険でしょう
(作品としての価値はまた別だとは思いますが)
ブッダをあくまで悩みに苦しみ続ける人間として描いたのは新しい視点だと思いますが、
そのブッダを通して描かれる事象があまりにも手塚視点過ぎてちょっとどうかと。
ひょっとして手塚本人は釈迦の説いた合理的生命観が嫌いだったんじゃないでしょうか。
そしてその仏陀の口を借りて自分の主張を延べさせることで、逆説的に、
そして周到に自己の生命観を読者に植え付けたかったんじゃないでしょうか。
仏教を少しだけ囓った身としてはちょっとあざといな。危険だなと思いました。
作品冒頭でブッダとはまったく関係ない大河ドラマ的な創作挿入が行われているのは、
この作品が連載されていた当時の白土三平「カムイ」等に対する危機感の現れだったのでしょうか?
私は別段手塚治虫信者と言うわけでも無いですし、嫌いなわけでもないので冷静に点数を付けさせていただきます。
wikipedia等でも何故か名著的な取り上げられ方をしていますが全く感心しません。
史実に忠実なブッダの話ではないです…
(2008-12-04)
(自称)釈迦研究家として、仏陀関連の書は必読であろうと思い、
また、手塚治虫氏が解釈する釈迦の生涯に興味があり、読んでみました。
全体を通読して感じたことは、全巻に占める量的にも質的にも、
ほとんど仏陀の話ではないということです。
そういう意味で☆二つという低評価にしています。
(私のレビューはいつも厳しい目なのですが、多くの人は無条件に満点を付け過ぎです)
確かに仏陀は登場しますが、周辺人物の物語も半分ぐらいを占め、
仏陀の説法も、本書では期待するほど多くは描かれてはいないです。
それから、手塚氏独特の茶化しがあるので、どうも不真面目に感じます。
文字通り「漫画」ですので、しょうがないですが…。
私は仏陀に関しては活字でいろいろと勉強したのですが、本書の
仏陀は史実から浮き彫りにされる仏陀像とはかなり異なり、
聖人とはかなり印象が異なります。したがってこれを叩き台にして
さらなる理解に足を踏み入れることは歓迎ですが、本書の仏陀像を
真に受けないほうが良いかと思います。理解を誤ります(笑)
開悟しても、あいかわらず人間臭く悩んだり迷ったりしています。
悟った人の証である六神通も身に付いていないようです。
マハー・モンガラナーとシャリープトラーなど釈迦十大弟子も
出番が少なく、あまり描かれていないことも残念でした。
はて、こんな人、史実には登場したかな?という人も
一部、漫画に見受けられます。
本書でも一部、「宇宙の真理」に肉薄した記述も見受けられますが、
真実の仏陀という人は、それはそれはものすごいことを明らかにされた
偉大な人物なのですよ。一言で言えば、永遠の輪廻転生という
苦しみから、抜け出す(=解脱)方法を明らかにしたのです。
それを鑑みると、偉大な仏陀の足跡を残念ながら描ききれていない
という評価が先にたってしまいます…。
タッタの物語もすごいですねー
(2008-09-22)
手塚版“ブッダ”の内容の素晴らしさは他のレビュアーの方の書かれている通りですが、私は特にこの作品に手塚先生のドラマツルギーのすごい非凡さを見ることができると思います。 三十代半ばでまさに劇的な最後をとげたキリストに比べて、仏陀の生涯は本来ドラマにしにくいと思います。 第一巻のおしまいになっても主人公がまだ生まれてもいないという破格の構成は初めて読んだときぶっ飛んだものですが、この物語の最初の主人公はパーリアのタッタです。
(ここから先はネタバレになるのでこの作品を未読の方はお止めください)少年時代のタッタは動物の心の中に入り込む能力を持ち、また他人のために自分の命を投げ出すことのできるという、言ってみれば生まれながらのリトル・ブッダです。 ところが家族と親友チャプラを殺されたことに対する恨みからその復讐に生涯をかけるようになります。 後にブッダの最初の弟子となり、修行時代のシッダルタにもかなり協力していたタッタが、物語の終盤で結局復讐のために命を落とすという皮肉は強烈です。 ブッダの“とらわれるな”という教えと正反対のことをしています。 しかもあろうことが、彼の向こう見ずな復讐のおかげでブッダの同胞のシャカ続は滅ぼされてしまうのです。 弱虫で結構自己中心的なシッダルタがブッダに成長していったのとは逆に、もともと豊かな仏性をそなえていたタッタが現世の醜さに毒されて、ついに殺戮の中に自らの命を失うというこの合わせ鏡のような構造は含蓄が深いと思います。 ブッダのような聖人はまず滅多にいませんが、我々のほとんどはタッタのような生き方をしているのではないでしょうか(いや別に人を殺すと言う意味ではありませんが)。 この人間の運命に対する鋭い洞察力が、えてして退屈なものになりやすい聖人伝に生き生きとしたリアリティを与えているのだと思います。
人間・釈迦
(2008-08-02)
「なぜ人は生きるのか」という疑問を10代から抱き、釈迦の教えにたどり着いたのはまだ最近。釈迦をここまでキュートな王子に描けるのは手塚さんしかいないかも。幼少のシッタルダ、アッサジ、スジャータ、子どものタッタが何とも可愛い。
仏教、釈迦の人生や思念を生き生きと描き、ユーモアやエンターテイメント性を含んだ分かりやすく親しみやすい内容は、堅苦しくなく読みやすい。
衝撃的なアッサジの死ぬシーンは恐怖と慈悲の心に泣き、それを目撃するシッタルダの感情に激しく同情し、ミゲーラを看病し続けるシッタルダに泣き、ダイバダッタの嫉妬と不安に人間はそういう所があるなど様々な感情を触発されます。
人間は醜い、弱い、美しい、優しい...人間の心は常に一定ではなく、気高く清らかに思える人でも、苦悩と葛藤と共に生きているのではないかなと。
けれど、そんな人はやはり光輝く、そして人を癒すものを持っている。
それが「慈悲」の心だと思っています...。全ての生きとし生けるものに対する愛は、自分の事の様に傷つく事が始まりなのかなぁ。
長い旅
(2008-07-06)
歩いていて、突然、周りのすべてが輝いていることに気づく瞬間があります。
そういう「世界の息づき」のようなものが、物語から飛び出してくるようなまんがです。
手塚先生からの贈り物、子供でも一気に読めると思います。
あたたかいものと、無常観のようなもの、相反する大きな感情が、矛盾なく胸の中に満ちてくる、傑作だと思います。
おすすめ度:
原始仏教の生命観世界観とは真逆
それが良いことか悪いことかはさておき、ブッダとなったゴータマの人生を前世から綴った伝承をもとにしていうのですが、
いつも通り手塚的生命観と世界観によって大きく翻意されています。
ブラウマーとゴータマの位置関係も逆になっていて、創作として読むならまだしも、
これ自体だけでブッダの生命観、世界観を学んだつもりになるのは危険でしょう
(作品としての価値はまた別だとは思いますが)
ブッダをあくまで悩みに苦しみ続ける人間として描いたのは新しい視点だと思いますが、
そのブッダを通して描かれる事象があまりにも手塚視点過ぎてちょっとどうかと。
ひょっとして手塚本人は釈迦の説いた合理的生命観が嫌いだったんじゃないでしょうか。
そしてその仏陀の口を借りて自分の主張を延べさせることで、逆説的に、
そして周到に自己の生命観を読者に植え付けたかったんじゃないでしょうか。
仏教を少しだけ囓った身としてはちょっとあざといな。危険だなと思いました。
作品冒頭でブッダとはまったく関係ない大河ドラマ的な創作挿入が行われているのは、
この作品が連載されていた当時の白土三平「カムイ」等に対する危機感の現れだったのでしょうか?
私は別段手塚治虫信者と言うわけでも無いですし、嫌いなわけでもないので冷静に点数を付けさせていただきます。
wikipedia等でも何故か名著的な取り上げられ方をしていますが全く感心しません。
史実に忠実なブッダの話ではないです…
(自称)釈迦研究家として、仏陀関連の書は必読であろうと思い、
また、手塚治虫氏が解釈する釈迦の生涯に興味があり、読んでみました。
全体を通読して感じたことは、全巻に占める量的にも質的にも、
ほとんど仏陀の話ではないということです。
そういう意味で☆二つという低評価にしています。
(私のレビューはいつも厳しい目なのですが、多くの人は無条件に満点を付け過ぎです)
確かに仏陀は登場しますが、周辺人物の物語も半分ぐらいを占め、
仏陀の説法も、本書では期待するほど多くは描かれてはいないです。
それから、手塚氏独特の茶化しがあるので、どうも不真面目に感じます。
文字通り「漫画」ですので、しょうがないですが…。
私は仏陀に関しては活字でいろいろと勉強したのですが、本書の
仏陀は史実から浮き彫りにされる仏陀像とはかなり異なり、
聖人とはかなり印象が異なります。したがってこれを叩き台にして
さらなる理解に足を踏み入れることは歓迎ですが、本書の仏陀像を
真に受けないほうが良いかと思います。理解を誤ります(笑)
開悟しても、あいかわらず人間臭く悩んだり迷ったりしています。
悟った人の証である六神通も身に付いていないようです。
マハー・モンガラナーとシャリープトラーなど釈迦十大弟子も
出番が少なく、あまり描かれていないことも残念でした。
はて、こんな人、史実には登場したかな?という人も
一部、漫画に見受けられます。
本書でも一部、「宇宙の真理」に肉薄した記述も見受けられますが、
真実の仏陀という人は、それはそれはものすごいことを明らかにされた
偉大な人物なのですよ。一言で言えば、永遠の輪廻転生という
苦しみから、抜け出す(=解脱)方法を明らかにしたのです。
それを鑑みると、偉大な仏陀の足跡を残念ながら描ききれていない
という評価が先にたってしまいます…。
タッタの物語もすごいですねー
手塚版“ブッダ”の内容の素晴らしさは他のレビュアーの方の書かれている通りですが、私は特にこの作品に手塚先生のドラマツルギーのすごい非凡さを見ることができると思います。 三十代半ばでまさに劇的な最後をとげたキリストに比べて、仏陀の生涯は本来ドラマにしにくいと思います。 第一巻のおしまいになっても主人公がまだ生まれてもいないという破格の構成は初めて読んだときぶっ飛んだものですが、この物語の最初の主人公はパーリアのタッタです。
(ここから先はネタバレになるのでこの作品を未読の方はお止めください)少年時代のタッタは動物の心の中に入り込む能力を持ち、また他人のために自分の命を投げ出すことのできるという、言ってみれば生まれながらのリトル・ブッダです。 ところが家族と親友チャプラを殺されたことに対する恨みからその復讐に生涯をかけるようになります。 後にブッダの最初の弟子となり、修行時代のシッダルタにもかなり協力していたタッタが、物語の終盤で結局復讐のために命を落とすという皮肉は強烈です。 ブッダの“とらわれるな”という教えと正反対のことをしています。 しかもあろうことが、彼の向こう見ずな復讐のおかげでブッダの同胞のシャカ続は滅ぼされてしまうのです。 弱虫で結構自己中心的なシッダルタがブッダに成長していったのとは逆に、もともと豊かな仏性をそなえていたタッタが現世の醜さに毒されて、ついに殺戮の中に自らの命を失うというこの合わせ鏡のような構造は含蓄が深いと思います。 ブッダのような聖人はまず滅多にいませんが、我々のほとんどはタッタのような生き方をしているのではないでしょうか(いや別に人を殺すと言う意味ではありませんが)。 この人間の運命に対する鋭い洞察力が、えてして退屈なものになりやすい聖人伝に生き生きとしたリアリティを与えているのだと思います。
人間・釈迦
「なぜ人は生きるのか」という疑問を10代から抱き、釈迦の教えにたどり着いたのはまだ最近。釈迦をここまでキュートな王子に描けるのは手塚さんしかいないかも。幼少のシッタルダ、アッサジ、スジャータ、子どものタッタが何とも可愛い。
仏教、釈迦の人生や思念を生き生きと描き、ユーモアやエンターテイメント性を含んだ分かりやすく親しみやすい内容は、堅苦しくなく読みやすい。
衝撃的なアッサジの死ぬシーンは恐怖と慈悲の心に泣き、それを目撃するシッタルダの感情に激しく同情し、ミゲーラを看病し続けるシッタルダに泣き、ダイバダッタの嫉妬と不安に人間はそういう所があるなど様々な感情を触発されます。
人間は醜い、弱い、美しい、優しい...人間の心は常に一定ではなく、気高く清らかに思える人でも、苦悩と葛藤と共に生きているのではないかなと。
けれど、そんな人はやはり光輝く、そして人を癒すものを持っている。
それが「慈悲」の心だと思っています...。全ての生きとし生けるものに対する愛は、自分の事の様に傷つく事が始まりなのかなぁ。
長い旅
歩いていて、突然、周りのすべてが輝いていることに気づく瞬間があります。
そういう「世界の息づき」のようなものが、物語から飛び出してくるようなまんがです。
手塚先生からの贈り物、子供でも一気に読めると思います。
あたたかいものと、無常観のようなもの、相反する大きな感情が、矛盾なく胸の中に満ちてくる、傑作だと思います。
