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カスタマーレビュー
おすすめ度:
衝撃の映像体験、フラー・ワールドの極限
(2008-05-06)
間違いなくB級映画の巨匠と崇拝されるサミュエル・フラーの最高傑作。ピーター・ブレック扮するジャーナリストが精神病患者を装って病院に潜入し突撃ルポを行うくだりや、この主人公のピリッツァー賞に対する子供じみたこだわりなど一見ショッキングでまじめなリアリティを欠く素材をフラーは自己流の仰々しくパワフルな演出を施して思い切り魅せてくれています。
戦争体験によって妄想に取り付かれた男、本来は誇るべき自らの肌の色を忌み嫌うようになってしまった青年、幼児に逆戻りしてしまった物理学者など、深刻な精神的問題を抱える患者たちがそれぞれを語るシーンの面白さ。実際、映画界入りする前にアフリカ戦線で戦場ジャーナリストとしてもならしたフラー監督の手腕が見事に生きています。あり得ないような人間描写が監督一流の実験的で強引な力に満ちた演出の力を得て“現実の力”を携えて私たちの目の前で繰り広げられます。
名カメラマン、スタンリー・コルテスによる白黒のコントラストを駆使しての革新的な映像表現、また効果音をたくみに散りばめた全編には、狂気と絶望の世界が満ち溢れます。フラーならではの大胆なカメラアングル、陰影の濃い抽象的なライティング、俳優たちのパワフルでエキセントリックな演技、そして暴力描写の迫力ある生々しさにこの監督のファンならずとも引き込まれてしまいそう。これはまさしくB級映画の枠をはみ出してしまっている、観て感じる意外に味わうことのできないスタイリッシュで刺激的な映像体験なのです。
ちなみに本編でしか味わえない一種独自の雰囲気はキューブリックの『時計じかけのオレンジ』の雰囲気にもオリジナリティの意味で匹敵するものです。密度、内容、雰囲気、技巧と、とにかくあらゆる意味でフラー・パワー満載のフィルムです。
強烈な音のドラマ
(2007-12-06)
これは低予算で作られた作品で、決して万人受けする映画ではありませんが、斬新な演出に打ちのめされる凄い映画です。
映画は“神は滅亡を望む時、まず人を狂人にする”というエウリピデス記の引用より始まり、1時間半ほどの上映時間中ほぼ精神病院の中ばかりで屋外シーンはありません。主人公のジャーナリストはピュリッツァー賞を手に入れたいという虚栄心の強い人物で、その目的を達成するために精神病患者になりすまし、とある精神病院で起きた殺人事件を暴こうとするのですが、狂人の演技のはずが、次第に正気と狂気の境が危うくなる...こう書いていくとサスペンスドラマのようですが、サミュエル・フラー監督の意図は決してそれだけではないのです。
まず、病院の精神病患者たちがオペラ狂の者に色情狂の女性たちなど強烈なキャラクター揃いで、特に主人公が色情狂女性の集団に襲われるシーンはトラウマになるほど怖いです。これらのキャラクターの描写で主人公が狂気になろうとするのにとてつもない説得力があります。他には人種差別の恐怖から逃れるために自分を白人だと思い込み、黒人を憎悪する黒人や、核兵器を作ってしまったというショックから逃れるために子供に戻ってしまう核物理学者などが登場し、つまり映画の中の精神病院はアメリカ、あるいは現代の病巣の具現であり、アイロニーの空間になっているのです。
そして、この作品の特筆すべき点は音による演出です。音源もモノラルでホームシアターで楽しむ場合、サラウンド効果はありませんが、随所に音による演出がなされています。中でも患者たちが寝静まった夜に主人公がオペラ狂の精神病患者に襲われるシーンでの音楽の効果はすごいです。音のないシーンでさえ音の演出になっています。主人公が患者たちが歩く精神病院の廊下を見て、“さまよえる幽霊たち”と名付けるシーンで意図的に廊下を歩く音を省き、“さまよえる幽霊たち”そのままの精神病院の廊下が描かれています。計算された音の効果という点においては映画史に残ってもいいのではないでしょうか。
なお本作は低予算で作られたため、室内セットの数も少なく、病院の廊下のセットも小さかったので、セット内に小人を歩かせて奥行きがあるように見せたりしています。B級ながらも小気味良い作品です。
おすすめ度:
衝撃の映像体験、フラー・ワールドの極限
間違いなくB級映画の巨匠と崇拝されるサミュエル・フラーの最高傑作。ピーター・ブレック扮するジャーナリストが精神病患者を装って病院に潜入し突撃ルポを行うくだりや、この主人公のピリッツァー賞に対する子供じみたこだわりなど一見ショッキングでまじめなリアリティを欠く素材をフラーは自己流の仰々しくパワフルな演出を施して思い切り魅せてくれています。
戦争体験によって妄想に取り付かれた男、本来は誇るべき自らの肌の色を忌み嫌うようになってしまった青年、幼児に逆戻りしてしまった物理学者など、深刻な精神的問題を抱える患者たちがそれぞれを語るシーンの面白さ。実際、映画界入りする前にアフリカ戦線で戦場ジャーナリストとしてもならしたフラー監督の手腕が見事に生きています。あり得ないような人間描写が監督一流の実験的で強引な力に満ちた演出の力を得て“現実の力”を携えて私たちの目の前で繰り広げられます。
名カメラマン、スタンリー・コルテスによる白黒のコントラストを駆使しての革新的な映像表現、また効果音をたくみに散りばめた全編には、狂気と絶望の世界が満ち溢れます。フラーならではの大胆なカメラアングル、陰影の濃い抽象的なライティング、俳優たちのパワフルでエキセントリックな演技、そして暴力描写の迫力ある生々しさにこの監督のファンならずとも引き込まれてしまいそう。これはまさしくB級映画の枠をはみ出してしまっている、観て感じる意外に味わうことのできないスタイリッシュで刺激的な映像体験なのです。
ちなみに本編でしか味わえない一種独自の雰囲気はキューブリックの『時計じかけのオレンジ』の雰囲気にもオリジナリティの意味で匹敵するものです。密度、内容、雰囲気、技巧と、とにかくあらゆる意味でフラー・パワー満載のフィルムです。
強烈な音のドラマ
これは低予算で作られた作品で、決して万人受けする映画ではありませんが、斬新な演出に打ちのめされる凄い映画です。
映画は“神は滅亡を望む時、まず人を狂人にする”というエウリピデス記の引用より始まり、1時間半ほどの上映時間中ほぼ精神病院の中ばかりで屋外シーンはありません。主人公のジャーナリストはピュリッツァー賞を手に入れたいという虚栄心の強い人物で、その目的を達成するために精神病患者になりすまし、とある精神病院で起きた殺人事件を暴こうとするのですが、狂人の演技のはずが、次第に正気と狂気の境が危うくなる...こう書いていくとサスペンスドラマのようですが、サミュエル・フラー監督の意図は決してそれだけではないのです。
まず、病院の精神病患者たちがオペラ狂の者に色情狂の女性たちなど強烈なキャラクター揃いで、特に主人公が色情狂女性の集団に襲われるシーンはトラウマになるほど怖いです。これらのキャラクターの描写で主人公が狂気になろうとするのにとてつもない説得力があります。他には人種差別の恐怖から逃れるために自分を白人だと思い込み、黒人を憎悪する黒人や、核兵器を作ってしまったというショックから逃れるために子供に戻ってしまう核物理学者などが登場し、つまり映画の中の精神病院はアメリカ、あるいは現代の病巣の具現であり、アイロニーの空間になっているのです。
そして、この作品の特筆すべき点は音による演出です。音源もモノラルでホームシアターで楽しむ場合、サラウンド効果はありませんが、随所に音による演出がなされています。中でも患者たちが寝静まった夜に主人公がオペラ狂の精神病患者に襲われるシーンでの音楽の効果はすごいです。音のないシーンでさえ音の演出になっています。主人公が患者たちが歩く精神病院の廊下を見て、“さまよえる幽霊たち”と名付けるシーンで意図的に廊下を歩く音を省き、“さまよえる幽霊たち”そのままの精神病院の廊下が描かれています。計算された音の効果という点においては映画史に残ってもいいのではないでしょうか。
なお本作は低予算で作られたため、室内セットの数も少なく、病院の廊下のセットも小さかったので、セット内に小人を歩かせて奥行きがあるように見せたりしています。B級ながらも小気味良い作品です。
